介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
「特養」と呼ばれている特別養護老人ホームは、比較的低コストで入居できます。そのため、地域によっては入居待ちが多いことで有名です。ここでは特別養護老人ホームの理解を深められるよう「サービス内容」「費用」「他の施設との違い」などを紹介します。実際に検討している人が気になる「入所のコツ」も解説していますのでご参考ください。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)とは
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)とは、介護老人福祉施設とも呼ばれる公的施設です。公的施設は、主に地方自治体や社会福祉法人が運営しています。全国に約1万施設あり、56万人が入所している特別養護老人ホームは、介護施設のなかでも大きな割合を占めています。
なお、特別養護老人ホームの利用料金は介護保険で一部を補えるため、月額費用を安く抑えられます。そのため大変人気があり、待機している人が多いのが実状です。
特別養護老人ホームのように介護保険制度で定められた施設のことを「介護保険施設」といいます。他にも「介護老人保健施設」「介護医療院」「介護療養型医療施設」が介護福祉施設に含まれます。
特別養護老人ホームの特徴
特別養護老人ホームは、常時介護が必要になった人のために「生活の場」と「手厚い介護サービス」を提供します。食事・入浴・排泄などの身体介護や生活支援、健康管理などのサービスを受けられる施設です。
介護職員も24時間常駐しているため、常時介護が必要な人も安心して暮らせます。長期入所が可能なため「終の棲家」として利用している人がほとんどです。
特別養護老人ホームの特徴
・地方自治体や社会福祉法人が運営する公的施設
・介護保険制度を利用して、安価で利用できる
・介護を必要としている人が安心できる生活環境
・原則として終身利用が可能
特別養護老人ホームの入居条件
人気の高い特別養護老人ホームですが、どのような人が入居できるか見ていきましょう。入居条件は以下の3点です。
特別養護老人ホームの入居条件
・要介護度3以上で65歳以上の高齢者
・特定疾病が認められた要介護度3以上の40~64歳までの人
・特例条件に当てはまる要介護1~2の人
要介護度3以上で65歳以上の高齢者
特別養護老人ホームの入居条件は要介護度3以上で65歳以上の高齢者です。ただし「感染症のリスクがある人」「夜間の医療行為が必要な人」など受け入れが困難なケースもあります。細かい入居条件は、施設によって違いますので、事前に問い合わせて確認してください。
特定疾病が認められた要介護度3以上の40~64歳までの人
特定疾病を患っているも40~65歳までの人も入居対象です。対象となる特定疾病は16種類あり、介護保険制度で「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病」と定められています。
介護保険対象となる特定疾病
1 がん(末期)
2 関節リウマチ
3 筋萎縮性側索硬化症
4 後縦靭帯骨化症
5 骨折を伴う骨粗鬆症
6 初老期における認知症
7 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
8 脊髄小脳変性症
9 脊柱菅狭窄症
10 早老症
11 多系統萎縮症
12 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
13 脳血管疾患
14 閉塞性動脈硬化症
15 慢性閉塞性肺疾患
16 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
引用:厚生労働省「介護保険制度について 」
特例条件に当てはまる要介護1~2の人
原則、要介護3以上の人が対象ですが、要介護1・2の人でも入居できるケースがあります。
以下の特例条件に当てはまる場合は申し込みが可能です。日常生活に支障をきたすほどの症状や環境の人は、市区町村へご相談ください。
特別養護老人ホームの特例条件
・認知症で、症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られる人
・知的障害・精神障害等を伴い、症状・行動や意思疎通の困難さなどが頻繁に見られる人
・家族からの深刻な虐待が疑われるなど、心身の安全・安心の確保が困難な人
・単身世帯や、同居家族が高齢または病弱であるなど、家族による支援が期待できない人。かつ地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分である場合
特別養護老人ホームのメリットとデメリット
特別養護老人ホームは、介護サービスが充実しているうえに、費用が安いため、人気の高い施設です。ただし「医療ケアが充実していない」「待機者が多い」などのデメリットもあります。施設検討時にはメリット・デメリットを知っておくことが大切です。
メリット
入居時に初期費用が発生しない
月々の費用が安く、低所得者も生活できる
24時間、介護サービスを利用できる
入居期間に制限はなく、終身利用が可能
公的施設のため倒産のリスクが少ない
デメリット
原則、要介護3以上の人しか入居できない
施設によっては待機者が多く、即入居することが難しい
多床室の場合は、プライベートな時間が確保しにくい
医療依存が高い人の受け入れは難しい
特別養護老人ホームで提供するサービス
費用が安くサービスが充実しているのが、特別養護老人ホームの特徴です。それでは実際に受けられるサービスについて解説します。なお、特別養護老人ホームのサービス内容は、介護保険法にて基準が定められています。
食事
1日3食の食事を提供します。栄養士が栄養バランスを考慮した献立です。健康的な食事を味わっていただけます。介助が必要な人には介護職員が手伝うので、無理せず食事ができます。
入浴
週2回以上、入浴の時間が用意されています。「一般浴」はもちろん「中間浴」「機械浴」などの設備が充実しています。歩行が困難な人や寝たきりの人の入浴もサポートします。
排泄
介護度の重い人にとっては排泄は介護職員の手を借りなければいけません。できるだけおむつに頼らないように、水分摂取をするなどスムーズな排泄を促します。寝たきりの人はポータブルトイレを利用するなど、排泄の介助をサポートします。
健康管理・緊急対応
訪問診療を手がける医師や、常駐の看護職員が健康管理を実施しています。日中は看護職員が常駐しているので緊急時も安心です。夜間の緊急時は、オンコール体制で看護職員がすぐ駆けつけます。
また、介護職員だけでなく看護職員が24時間常駐している施設もありますので、夜間の医療行為が必要な人は医療体制と受入条件を確認してください。
リハビリテーション・機能訓練
要介護の人は運動不足になると、心身機能が衰えます。寝たきり状態の予防や自立のためにも、身体機能回復を目的としたリハビリが必要です。特別養護老人ホームでは「生活リハビリ」を中心としてリハビリテーションや機能訓練を実施しています。
生活支援
重度の要介護の人は、身の回りの家事生活を自分ですることは困難です。特別養護老人ホームでは清掃や洗濯などの生活をサポートしています。
レクリエーション
施設での生活に張りが出るように、レクリエーションを企画しています。運動やゲーム、手芸などレクリエーションの種類は多様です。正月、七夕、クリスマスなど季節行事が盛んな施設もあります。頻度は施設によって違うので、事前に確認してください。
看取り
特別養護老人ホームは基本的には終身利用できる施設です。そのためほとんどの施設では看取りに対応しています。看取りは加算対象です。その分、費用が増すことを覚えておいてください。穏やかな最期を送れるように、家族と連携しながらケアを実施します。