雇用保険法上の賃金
雇用保険上の賃金とは、賃金・給与・手当・賞与・その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのものをいいます。
雇用保険法上の賃金とは
(1) 「事業主が労働者に支払ったもの」であること
(2) 「労働の対償として支払われたもの」であること
雇用保険法上の賃金
(1) 「事業主が労働者に支払ったもの」であること
事業主を通じないで従業員が得るもの、例えば、従業員がお客様から直接受け取ったチップ等は、「事業主が労働者に支払ったもの」にならず、賃金とはなりません。
雇用保険法上の賃金
(2) 「労働の対償として支払われたもの」であること
「労働の対償として支払われたもの」とは、以下を言います。
労働の対償として支払われたもの
① 実費弁償的なものでないこと
② 任意的、恩恵的なものでないこと
労働保険料の算定となる賃金とは、上記雇用保険上の賃金の全てが対象になります。
離職証明書等に記載できる賃金
離職証明書等に記載できる賃金とは、雇用保険上の賃金から次の(1).(2) の賃金を除いたものをいいます。
つまり、毎月の定期給与として支払われる賃金が対象となります。
(2) 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金
離職証明書等に記載できる賃金
(1) 臨時に支払われる賃金
臨時に支払われる賃金とは、支給理由の性格が臨時的であるもの、及び支給理由の発生が臨時的であるもの、すなわち支給されることがまれであるか、あるいは不確実であるものをいいます。
離職証明書等に記載できる賃金
(2) 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金
3か月を超える期間ごとに支払われる賃金とは、毎月決まって支払われる賃金以外のもの、すなわち毎月の定期給与以外の賃金のうち、年間を通じての支給回数が3回以下の場合が該当します。
したがって、労働協約、就業規則等により年間を通じて4回以上支給されている場合は、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金に該当しません。
具体的な算定方法は、以下のとおりです。
賃金の支払い回数の算定方法
- 支給回数の算定は、賃金の名称が異なっても同一性質を有すると認められるものごとに算定を行います。
したがって、賞与として年2回、決算手当として年2回支給される場合は名称が異なっても、一般的に同一性質を有すると認めまれますので、これらをまとめて年4回の支給として算定します。 - 3か月を超える期間ごとに支払われることが規定等で定められている賃金が、実際の支給に際し、事業主の都合により分割された場合は、分割したものをまとめて1回の支給として算定します。
賃金の範囲に算入される現物給与
通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は、食事・被服及び住居の利益のほか、ハローワーク(公共職業安定所長)が定めるものをいいます。
現物給与について代金を徴収するものは、原則として賃金とはなりませんが、当該徴収金額が実際費用の3分の1を下回っている場合は、実際費用の3分の1に相当する額と徴収金額との差額部分は、賃金として取扱いますが、実際費用の3分の1を上回る代金を徴収するものは現物給与とはなりません。
賃金と解されるものと、解されないものの具体例
労働保険料の算定基礎となるもの(賃金と解されるもの)
賃金日額の算定基礎に含まれるもの(離職証明書等に記載する賃金)
- 基本給、固定給等基本賃金
- 超過勤務手当、深夜手当、休日手当、宿直・日直手当等
- 扶養手当、家族手当等
- 通勤手当(通勤定期券)
- 住宅手当、物価手当
- 単身赴任手当、勤務地手当
- 精勤手当、皆勤手当
- 技術手当、職階手当
- 特別作業手当、能率給
- 転勤休暇手当、受験手当(実費弁償的でないもの)
- 前払い退職金(在職中に、退職金相当額の全部又は一部を給与に上乗せ支給するもの)
- 休業手当(労基法第26条)、有給休暇日の給与
- 遡って昇給した賃金
- 食事、被服、住居の利益
- 年4回以上支給される賞与
- 離職後に支払われた未払い賃金
- 事業主の手を経由したチップ
- 労働協約等によって事業主に支払いが義務付けられた所得税、社会保険料等の労働者負担分
- 傷病手当支給終了後に事業主から支給される給与及び傷病手当支給前の待機期間(3日)に支給される給与(労働協約等に定めのあるもの)
※ 通勤手当については、平成28年度の税制改正により、給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられました。
通勤手当の非課税限度額の引上げについて 詳しくは、こちらからどうぞ
賃金日額の算定基礎に含まれないもの(離職証明書等に記載しない賃金)
- 「臨時に支払われる賃金」(支給事由の発生が、臨時的あるいは不確実なもの)
大入袋、業務手当等の名称で、事業の利益があった都度支払われる手当等 - 「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」
年3回以下支給される賞与
労働保険料の算定基礎とならないもの(賃金と解されないもの)
実費弁済的なもの
- 出張旅費、宿泊費、赴任手当
- 移転料
- 寝具手当、工具手当
- 車の損料
恩恵的なもの
- 災害見舞金、療養見舞金、傷病見舞金
- 結婚祝金、死亡弔慰金、出産見舞金(個人的な吉凶禍福に対して支給されるもの)
- 祝祭日、創立記念日に特別に支給される給与(労働協約等に定めがなく、恩恵的に支給する場合)
- 海外手当、在外手当(その者が国内勤務に服する場合に支払われるべき給与に対応する部分は賃金と認められる)
- 残業をした際等にたまたま支給された夜食
- 離職後に決定された給与(昇給含む)及び賞与
その他
- 休業補償費(労基法第76条:無過失賠償責任に基づき事業主が支払うものであって労働の対償とは認められない)
- 解雇予告手当
- 出産手当金、傷病手当金(傷病手当金に付加して事業主から支給される給付額についても恩恵的と認められる)
- 退職金(退職を事由として退職時に支払われるもの)、脱退給付金付き団体定期保険の保険料
- 会社が全額負担する生命保険の掛金
- 財産形成貯蓄のため事業主が負担する奨励金等
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